天才博士の恋愛理論
私が在学している同じ理学部の2年上の3回生。
接点があるのかと言われれば、実はそれほどあるわけではない。
だけど、なぜか入学式にサークルの勧誘で偶然誘われてから、何かとこうやって誘いに来る。
私、きっぱりとサークルの勧誘も断ったんだけどな………。
体験入部さえしていないのに、なぜか悉く誘ってくる先輩。
すでに入学してから3か月。
さすがに、脈がないと諦めてくれてもいいと思うんだけど―――…
「あの~…」
困り果てていると、私の後ろというか、本来なら左隣に座っていた親友の雪乃(ゆきの)が私の後ろから顔を出してきた。
「吉田先輩。完璧、あたしの存在忘れてません?」
ほんのり頬を膨らませながら、吉田先輩を冷たい目で見る雪乃。
そんな雪乃を見て先輩は、「ごめん、忘れてた!」と悪気もなく言ってのけた。
「全くもう! 先輩も、瑞穂が困ってるのわかってあげてくださいよ~。ほら、手なんて放して。先輩の声、大きいから注目浴びてるし」
ポンと雪乃に肩を叩かれ、私はハッとして視線を周りに向ける。
すると、みんなから視線を一気に受けていたことに気づいた。
そうだった。
吉田先輩って、何気に人気あるから………。
微かに女子の冷たい視線を受けて、私はハッと自分の手を握っている吉田先輩の手から自分の手を外した。
すると、吉田先輩は残念そうに口を尖らせる。
その時に、ふとこちらを見ていた女の子の集団の中で、目が合った芹沢教授。
芹沢教授は私のことをジッと見ていたかと思うと、周りにいた女の子たちに何かしらを言って講義室から出て行った。