天才博士の恋愛理論
残念そうな女子たちの声を聞くと、お誘いは見事に断られたらしい。
「相変わらず、芹沢の奴、女子にモテてんな~…」
吉田先輩は、頬杖をつきながら教授が出ていったことで、がっかりしている女子の集団を見ながらぼそっと呟いた。
そんな先輩の言葉に乗っかったのは雪乃だった。
「そりゃそうですよ。あの若さで教授。おまけに、すっごいかっこいいし。やっぱり、先輩が1回生の時からすごかったんですか?」
「まあね。だって、俺と年が3つしか違わないんだぜ? 俺が入学した時なんて、21歳だろ? 女子なんて、年齢的にももろに恋愛対象だろ」
「そ、そうですね。年代的にも同じですもんね」
「あの頃、合コンとかに行っても芹沢の名前は絶対に出るって、男どもは嘆いてたな」
やっぱり、昔からすごかったんだ~…。
雪乃と吉田先輩の話を聞きながら、私はさっきまで教授がいた場所を見つめた。
すでに教授を取り囲んでいた女の子たちは講義室を出てしまっていた。
今日はこれで講義はすべて終わりだし、私もそろそろ帰ろうかな?
「雪乃…。私、買い物して帰ろうと思ってるんだけど―――…」
「あ、そうなの? それじゃ、付き合うよ」
「えっ!? 瑞穂ちゃん、本当に帰っちゃうの?」
雪乃と二人立ち上がると、先輩は私の腕を掴んで悲しそうなまなざしで見てくる。
うっ……
まるで、捨てられている子犬のような目で見てくるのはやめてほしい。
なんだか、自分がすごく悪い気がしてくるじゃないですか。