天才博士の恋愛理論
「えっと…。ほら、私、先輩に用事があるって、さっき言ったじゃないですか。だから、早く帰らないと」
なんとか当たり障りのない答えを導き出し、やんわりと先輩が掴んでいる手を離す。
「そっか…。でも、買い物して帰るって、もしかしてショッピング? 俺、付き合っちゃダメ!?」
「えっ!? えっと…、ショッピング…というようなものでは…。ただの食料品の買い物ですし……」
困ったな…。
まさか、ここまで引き下がらないとは。
いつもなら、『用事がある』って断ると、残念そうな顔はしながらも、引き下がってくれるのに………
「そうですよ、先輩。それに、先輩こそ今日はサークルはいいんですか?」
「え…? あ、そうだった!」
雪乃に言われて思い出したのか、吉田先輩はいきなり立ち上がる。
「今日は、サークルの飲み会だったんだ。それもあって、瑞穂ちゃんを誘いにきたんだった。実は今回の飲み会、俺が幹事でさ~」
「そ、そうですか…。それは大変ですね」
なんとかなりそうだとホッとしたところで、雪乃の「それじゃ、早く部室に行ったほうがいいんじゃないですか?」という言葉に、「そうだね!」と吉田先輩は立ち上がった。
ホッと息を吐いていたところで、講義室を出ていこうとしていた吉田先輩は足を止めて振り返った。