チャット恋愛注意報!!(旧)
今この家に住んでいるのは、ユージとお母さんだけらしい。
お父さんは単身赴任中で、4歳上のお姉さんは街で仕事をしながらアパートで一人暮らし中。
お母さんは昼間仕事をしているので、ユージは夏休み中、ほとんど室内で一人で過ごしていたようだった。
「うちの親は基本放任だから、自由に過ごしていいよ。 むしろ自由に過ごして欲しい」
そんな風に言ってユージは笑い、ご飯を食べ進めていく。
私やYUKIもご飯を食べながら、色々な話を続けていった。
「お姉さんが居たなんて全然知らなかったよ。 4つ上ってことは……今21?」
「うん、21。 チャットだと家族の話はしないからね」
「だな。 俺も全然、家のことは言ってない。 というか、言わないのが普通だからね」
「YUKIも、兄弟居る?」
ユージの問いに、YUKIはクスッと笑う。
だけど次の言葉はそれに対する答えじゃなくて、私に対する質問だった。
「サクラはどう?」
「え?」
「兄弟は?」
「あー……私は居ないよ。 でもお姉ちゃんが欲しかったなぁ。 チャットの中のYUKIのようなお姉ちゃんが居たら、すっごく楽しかったと思う。
残念ながら、お姉ちゃんじゃなくてお兄ちゃんだったけどね」
「ふふっ、ごめん」
「それで……YUKIは? 兄弟、居る?」
ユージの問いを、今度は私が言う。
だけどYUKIはやっぱり笑うだけで、言葉は返してくれなかった。
うーん……『暗黙のルール的な何か』ってことだよね。
でも、居ないなら居ないって言うはずだから……兄弟は、居る?
だけど、あまり話したくないのかな。
すっごく仲が悪くて絶縁状態とか……もしくは家庭の状況が複雑で、私たちに話せる状況じゃないとか……。
……気になるけど、YUKIが言わないのなら聞かないでおこう。
ユージも私と同じように考えているのか、それ以上を聞くことはなかった。