チャット恋愛注意報!!(旧)
……私とユージは黙ったままYUKIを見つめていた。
口を挟むことなんて出来なかった。 ううん、言葉自体が、見つからなかった。
「6年前の夏も、ユキ姉は手術をしたんだ。
それで……手術が無事に済んだら、フジヤマとリアルで会おうって思ってたみたい。
でも約束してたわけじゃなくて、ユキ姉が勝手に考えてただけ。 実際に会えるかどうかはわからないけど、『フジヤマと会う』ってことがユキ姉の生きる希望になってたんだと思う」
YUKIがそう言った時、私は、フジヤマの言葉を思い出していた。
ーー『6年前の、7月の終わりに……ユキは俺に言ったんだ。 『もし私たちがリアルで会ってたら、付き合ったりしてたかな?』って。
俺はいつもと変わらずに、アホなこと言って笑ったんだよ。『絶対あり得ない』って。 『ユキと付き合うくらいなら死ぬわ』って』
ーー『……6年前にユキとどんなことを話してたかは、もうほとんど忘れちまった。 だけどさ、あの時のことはずっと覚えてるんだよ。
俺のあの時の言葉は、ユキを傷つけたんだと思う。 俺のアホな言葉のせいで、ユキはチャットを辞めたんだよ』
……フジヤマと会うことがユキさんの希望になっていたのなら、フジヤマのその言葉は……チャット内での話だとしても、きっとショックだったはず。
チャットで笑っていても、でも実際は、笑うことが出来なかったのかもしれない。
「……あのね、YUKI。 私、フジヤマに聞いたんだけど……」
……もしかしたらユキさんは、フジヤマの言葉を気にしていたんじゃないかな?
それが原因で、チャットを辞めた……?
そんな風に思ったから、フジヤマに言われたことを話した。
だけどYUKIは、小さく笑って首を横に振った。
「ユキ姉はその話も覚えてたよ。 でも『チャットでの話なんてそんなもんでしょ』って言ってた。
フジヤマに『YES』と言われていたら嬉しかったと思うけど、でもユキ姉は『フジヤマがそんなこと言うわけないから』って笑ってた。 俺もそう思うよ」