チャット恋愛注意報!!(旧)
「もしもしっ」
『サクラ、今ユージの家だよな? 一人?』
……フジヤマだ。
毛だらけのオッサンの声だっ……!!
「あのっ……今は一人だけど、すぐ近くの部屋にユージとYUKIが居るからっ。
だからそっちに行って、フジヤマから電話来たって知らせるからっ……!!」
『あ、大丈夫。 今さっきメールしといた』
「……へ?」
『明日そっちに行く。 だから、大丈夫』
そっちに、って……。
「……フジヤマ、ユージの家に来るの?」
『正確には、オフ会ん時の駅な。 あそこで待ち合わせて、それからユキのところに行く』
「ユキさんのところへ……?」
『おうよ、無敵のフジヤマさんの登場だぜい』
電話の向こうで、フジヤマは笑っているみたい。
でも、仕事……忙しいんだよね? なのにこんな急に……。
「あの……仕事、大丈夫なの……? 忙しいんだよね……?」
『あぁそれな、嘘だ』
「え……」
『現場移動すんのは10月から。 今はまだアホみたいに暇だよん』
「……マジですか」
『マジ。 だからさぁ、夜とかやることなくてクソつまんなかったわー。 やっぱり俺にはチャットが必要だねっ』
「……」
……フジヤマ。
めっちゃフジヤマだ。
アホなオッサン、そのままだ。
「……あのね、フジヤマ。 私、フジヤマが居なくて凄く寂しかった。
でも『フジヤマは仕事だから』って、いっぱいいっぱい自分に言い聞かせてきたんだよ?
なのに、嘘って……もうね、ほんっとそれ、最悪だから」
『俺に会いたくて枕を濡らしてたんだ? ふふふっ、なんだかんだ言ってやっぱり俺に惚れてたわけかっ』
「惚れてない。 枕も濡らしてない」
『照れるな照れるな。 よし、じゃあ期待に応えて30秒後に部屋に突入するっ』
「なにアホなことを……って、えっ?」
部屋に、突入……?
いやいやいや、無理だよね。 あり得ないよね。
フジヤマがここに来られるわけないじゃん。 無理に決まってるじゃん。
でも……いや、まさかね……。
「……冗談、だよね?」
『カウントダウンしろよ、ほらあと10秒』
「……」
『9、8、7』
……6……5……4……、
『3、2、1』
……ゼロ。
「……」
『嘘だよーん』
……ですよね、はい。