チャット恋愛注意報!!(旧)


「もしもしっ」

『サクラ、今ユージの家だよな? 一人?』




……フジヤマだ。

毛だらけのオッサンの声だっ……!!




「あのっ……今は一人だけど、すぐ近くの部屋にユージとYUKIが居るからっ。
だからそっちに行って、フジヤマから電話来たって知らせるからっ……!!」

『あ、大丈夫。 今さっきメールしといた』

「……へ?」

『明日そっちに行く。 だから、大丈夫』




そっちに、って……。




「……フジヤマ、ユージの家に来るの?」

『正確には、オフ会ん時の駅な。 あそこで待ち合わせて、それからユキのところに行く』

「ユキさんのところへ……?」

『おうよ、無敵のフジヤマさんの登場だぜい』




電話の向こうで、フジヤマは笑っているみたい。

でも、仕事……忙しいんだよね? なのにこんな急に……。




「あの……仕事、大丈夫なの……? 忙しいんだよね……?」

『あぁそれな、嘘だ』

「え……」

『現場移動すんのは10月から。 今はまだアホみたいに暇だよん』

「……マジですか」

『マジ。 だからさぁ、夜とかやることなくてクソつまんなかったわー。 やっぱり俺にはチャットが必要だねっ』

「……」




……フジヤマ。

めっちゃフジヤマだ。


アホなオッサン、そのままだ。




「……あのね、フジヤマ。 私、フジヤマが居なくて凄く寂しかった。
でも『フジヤマは仕事だから』って、いっぱいいっぱい自分に言い聞かせてきたんだよ?
なのに、嘘って……もうね、ほんっとそれ、最悪だから」

『俺に会いたくて枕を濡らしてたんだ? ふふふっ、なんだかんだ言ってやっぱり俺に惚れてたわけかっ』

「惚れてない。 枕も濡らしてない」

『照れるな照れるな。 よし、じゃあ期待に応えて30秒後に部屋に突入するっ』

「なにアホなことを……って、えっ?」




部屋に、突入……?

いやいやいや、無理だよね。 あり得ないよね。

フジヤマがここに来られるわけないじゃん。 無理に決まってるじゃん。


でも……いや、まさかね……。




「……冗談、だよね?」

『カウントダウンしろよ、ほらあと10秒』

「……」

『9、8、7』




……6……5……4……、




『3、2、1』




……ゼロ。





「……」













『嘘だよーん』







……ですよね、はい。


< 128 / 182 >

この作品をシェア

pagetop