チャット恋愛注意報!!(旧)
……ちょっと信じてしまった私、アホすぎる。
フジヤマが来てくれたら。と願ってしまった私、ほんっとアホだわ。
『ちょっと期待した? なぁ、期待しただろ?』
「してません」
『怒ってるもん、期待したよなー?』
「……知らないっ」
電話の向こうで、クククッと笑うフジヤマ。
ほんとに、もう……なんでフジヤマはこう、アホなんだ。
「……フジヤマは、いつも変わらないね」
ため息混じりの私の声に、フジヤマはまた笑う。
『昔から変わらないのが俺だからね。 つーか、変わらないように“演じてた”から』
「……演じてた?」
『あんな胡散臭い奴、実際に居るわけねぇじゃん』
胡散臭い、って……フジヤマ、自分のことなのに……。
でも『演じてた』ってことは、実際のフジヤマは違う……?
『なぁ、他人の粗探しばっかりしてる人間って居るだろ? 俺、それなんだわ。
表面では適当に繕ってるけど、実際は相手を見下して、馬鹿にしていたり。 チャットでも昔は……ユキと会う前は、荒らしばっかりしてた』
「……そう、なの……?」
『うん。 『仲良く』とか『楽しく』とか、そんなのくだらないって思って、他人が嫌がるようなことばっかりしてた。
なんだっけ。 ほら……【時計塔】? あんな感じで、いつも最低なことしてたよ』
【時計塔】……チャットサイトを荒らしてた人だ。
荒らすことに飽きたのか管理人が対処したのかはわからないけれど、数日で消えた名前。
フジヤマは、あんな風にチャットを荒らしてたんだ……。
『……全部くだらない。 そう思ってた時期があるんだよ』
そう言ったフジヤマは、笑っている……ような気がするけれど、よくわからない。
笑っている感じだけど、声に力はなくて、どこか寂しそう。
『俺のリアルはモノクロで、カラーになることなんかない。 ずっとそう思ってたし、これからもそうだと思ってた。
でも……そんな俺に声をかけてくれたのが、ユキだったんだ』