チャット恋愛注意報!!(旧)


……リアル。

そう、ここはリアルなんだよね……。


私は三原 桜子で、ユージは木瀬 祐二。

フジヤマは沢口 晋也で、YUKIは雪村 秀一。

ユキさんは雪村 由紀子。


それぞれちゃんと苗字と名前があって、それぞれの生活をしている。

ネットで出会った私たちは、チャット友達となり……そしてリアルでも会い、今はリアルの友達になった。




「……私も、みんなのことをちゃんと名前で呼ばなくちゃいけないね。 慣れるまで時間がかかりそうだけど……」

「フジヤマはどう見てもフジヤマだもんね。
沢口さんでも晋也さんでもなく【フジヤマ】って感じ」

「だよねぇ……。あ、YUKIはピッタリの名前だよね。 雪村 秀一、ってなんか頭良さそうだもん」

「あー、クールな見た目に合ってるね。 確かにYUKIっぽい。 ユキさんはユキさんのままでいいかな。 本名が由紀子だし」

「YUKIみたく、私たちもユキ姉って呼んじゃう? そうすればオッケーじゃない?」

「ふふっ、いいかも」




そんなことを話しながら、私たちは笑い合う。




「ユージはそのままユージでいいよね。 うん、問題なしっ」

「サクラは、やっぱり桜子って呼んだ方がいい?」

「んー……どうだろう。 私、親にも『サクラ』って呼ばれてるんだ。その方が呼びやすいんだって。
だったらサクラって名前にすればよかったのにね。 なんか、『子』がつく名前って古い感じがしない?」

「そんなこと言ったら、由紀子さんだって『子』がついてるよ?」

「あ、そう言われるとそうだね。 でもユキコは呼びやすいでしょ? サクラコって、なんか発音しにくい感じ」




全国の桜子さんには申し訳ないけれど……でも私は『サクラでいいのに』ってずっと思ってた。

サクラは元気なイメージ。というか、そういう女の子を演じてきてたから。

だからこそ、私はサクラになりたかった。




「サクラみたいになれたらいいのに。ってずっと思ってたよ」




そう言った私に、ユージは笑う。




「今の桜子は、サクラと何も変わらないだろ?」


< 152 / 182 >

この作品をシェア

pagetop