チャット恋愛注意報!!(旧)


………

……




新幹線が目的の駅へと到着し、私たちは他の人たちと同じようにドアへと向かった。

このあと、私とユージは別々の電車に乗ってそれぞれの家に帰ることとなる。


お互いの電車が到着するまでまだ30分ほどあったから、一度駅を出て、ロータリーにあるベンチへと座った。

もう夕方だから、夏の暑さは幾分和らいだ感じだ。







「……私たちの家、もっと近かったらいいのに」




ペットボトルの蓋を開けながら言った私に、ユージは何度も頷く。




「学校も同じだったらもっとよかった。 学年は違うけど、会おうと思えばすぐ会えるし」

「でも、さすがにそれはないもんねぇ……。 チャットで出会った私たちが実は同じ学校だった!! なんて、そんなの漫画の世界だよ」

「でも、俺たちの出会いも相当なものだと思うけどね?」

「あー……それは否定出来ない事実だね。 実はコレ漫画の世界だったりしてっ」

「じゃあサクラ、食パンくわえながら走って。 俺、曲がり角の向こうから登場するから」

「なんでやねんっ。 ていうかベタだねぇ」

「ベッタベタな展開だな」




そんなことを言いながら、私たちは笑い合う。

新幹線の中ではあまり話さなかったけれど、今はいつもと同じように笑うことが出来ている。

チャットの時と同じように笑い、チャットの時よりも近くにユージを感じながら過ごしている。

……ごくごく自然と。 当たり前のように、私たちは笑っていた。








「……ねぇユージ」

「ん?」

「私……前へ進めるかな? ちっぽけな世界から、抜け出すことが出来るかな……?」




ジュースを少しだけ飲んだあと、俯きながら言葉を続けていく。

『周りの人の迷惑にならないかな』と。『邪魔にならないかな』と。




「……幽霊みたいな私を受け入れてくれる人、居るのかな……」




ポツリと言ったその言葉に、ユージはふっと笑って私の頭を撫でた。




「人間は何百万と居るんだから、誰かは受け入れてくれるよ」

「……いや、うん……まぁ、はい……」




……規模が大きいなぁ……。


< 154 / 182 >

この作品をシェア

pagetop