チャット恋愛注意報!!(旧)
ドキ、ドキ、ドキ……。
鼓動は速くなっていくばかりで、落ち着くことはない。
さっきまでYUKIと二人きりだった部屋に、今度はユージと二人で入る。
……ドアの鍵も、そっと掛けておく。 いや、念のためだよっ?
大事な話をしてる最中にフジヤマが来て、邪魔されたくないからねっ……!!
と、自分に言い聞かせるものの……やっぱりドキドキは増すばかり。
とりあえず、えっと……出しっぱなしだったプリントを整理して、カバンにしまって、それから……。
「緊張してる?」
「あ、えっと……!!」
「俺は緊張してる。 朝も、ずっと二人だったのにね」
……優しい顔で笑うユージが、ベッドに座る。
そしてそのまま倒れるように横になり、天井を見つめた。
「前にこの部屋に来た時……『みんなチャットのサクラに惹かれて、そしてリアルのサクラにも惹かれてる』って話したのを覚えてる?」
「あ……うん……」
ユージが初めて私の部屋に来た時の言葉だ。
木を登り、忍者のように屋根を伝ってきたユージ。
その時の言葉と同じものを、ベッドの上のユージが言った。
「……YUKIは今でもサクラが好きなんだろうなって思ってる。 それはもちろん、恋愛としての意味で」
「え……」
「だって、YUKIはいつもサクラを見る目が優しいから。
頭撫でたり、耳元で何かささやいたり……そういうの見てると、なんかこう、嫉妬っていうか、自分が情けなくなるというか。
YUKIは自然とそういうのが出来るけど、俺には出来ない。 俺がYUKIと同じことをしても、全部ぎこちないというか……『らしくない』と自分で思う」
天井を見つめるユージは、寂しそうに笑っていた。
YUKIと自分を比べて、『自分には出来ないから』と小さく言って……。
「……サクラはYUKIと一緒に居た方がいいんじゃないかな、とも思ってた。
YUKIは優しいし、なんだって出来るし。 だからサクラは、YUKIと居る方が幸せなんじゃないかって考えてた」