チャット恋愛注意報!!(旧)


【おまけ(YUKI side)】






「なぁなぁシュウちゃんよ」

「なに?」


「お前さ、サクラのことマジで好きだっただろ?」




ある日の夜。

フジヤマこと沢口 晋也が俺の部屋にやって来た。


同居を初めて2日目の夜で、フジヤマはついさっきまで親父と飲んでいたようだ。


……酔っぱらいの相手は面倒だな。 と思いながら、パソコンの画面を見つめている。




「なんか言えよコラ」

「『なんか』とは?」

「イエスとかイエスとかイエスとか」

「あぁ……じゃあノーで」

「ノーかよっ」




そう言った瞬間、イスがグルッと回されて、フジヤマと視線が合う。







「俺は、サクラのこと好きだったぞ?」

「……友達としてだろう?」

「いやいやいや、お前が知らないだけでな、俺とサクラはいい感じだったんだぞー?」

「あ、そ。 それで?」

「お前も惚れてただろ? いや、まだ惚れてるだろ?」




……目が据わってる。

完璧に酔っているようだけど、それでも痛いところをついてくるな……。




「……好きだね。 隙あればユージから奪いたいね」

「寝取りキター」

「いや来てないし。 ていうか、多分これからも来ないだろうね」




サクラはユージが好きで、ユージはサクラが好き。
それは絶対に変わることのない事実。


サクラは俺のことも好きでいてくれてるけれど、それは完全に『友達としてのもの』。

それ以上でも以下でもなく、俺とサクラは『それだけの関係』ということ。




「……でも、『それでもいい』って思ってる俺が居る。
サクラが幸せならそれでいい。 サクラの笑顔を見てると、俺も元気になれるから。
だから俺はこれからも二人を見守っていく。 それだけだよ」

「……お前それ、究極の愛だな。 はぁ……ほんっとにお前は、可哀想な奴だなぁ……」

「ちょ、なんで泣くのさ。 ていうか別に可哀想じゃないし」

「可哀想だろ!! 一生独身が決定したようなもんだぞっ!! お前一生童貞だぞっ!!」

「何故そうなる」




……酔っぱらいってのは、本当に面倒だ。

何故こう、アホなんだ。


……いや、この人は最初からアホか……。

酔ってなくてもアホだから、こればっかりはもう、どうしようもない。




「フジヤマ」

「お義兄さまとお呼びっ!!」

「アホか。 ほら、さっさと自分の部屋に行けって」

「あ、無理。 もう1歩も動けんわ。 つーことでベッド頂き!!」




……って、3歩歩いてベッドに行ってるしね。

そしてそのまま爆睡してしまうというね。




「まったく……フジヤマは相変わらず、フジヤマだな」




深く息を吐き出した後、フジヤマにタオルを掛けてやる。





「……あんまり飲み過ぎるなよ、“義兄さん”」




その言葉のあと、俺はまたパソコンに向かい、『高校生ルーム8』を開いた。


今日もまた、サクラとユージが楽しそうに話している。




「相変わらず、ラブラブだな」




小さな小さな笑みを浮かべたあと、【シュウ】の名でログイン。




いつもと変わらないその場所で、俺は今日もまた、大切な仲間と言葉を交わして笑い合う。


そんな時間が、俺にとっての何よりもの幸せだった。








【end】


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