チャット恋愛注意報!!(旧)
「お前は、可愛いヤツだのぉ」
「わっ……ちょっと……」
人が行き来する場所だというのに、フジヤマは私の髪をグシャグシャにして、はははっと笑う。
通り過ぎていく人たちが、『何事だ?』という感じで見ている。
「フジヤマ、やめてよっ」
「やめないよーん」
「もぉっ……大声出して、警察に突き出すんだからっ」
「サクラはそんなことしない。 つーか出来ないだろ? な、人見知りのお嬢ちゃん?」
「うっ……確かに、そうだけど……」
恥ずかしさで顔が赤くなるのを感じながら俯く。
フジヤマは、相変わらず笑っているようだ。
「ほーんと、サクラは可愛いねぇ。 可愛いからもう少し一緒に居ようっと」
「え? あ、ちょっと……!?」
私の腕を掴んだフジヤマはスタスタと歩き出し……駅を抜けて、さっきまで居た駐車場へと戻ってきた。
「デートしよーぜ」
「……はぁ!?」
「せっかく来たんだから、もっと観光したいじゃん? ほれ地元県民、案内せい」
……と、ノリノリなフジヤマは、半ば無理矢理に車の後部座席に私を乗せた。
「ら、拉致監禁だよっ……!?」
「じゃあ大声出せば? すぐ誰かが駆けつけるぜ?」
「うっ……」
「別になんもしねーって。 ちょっとした観光だ」
そう言ったフジヤマは、エンジンをかけたあとにシートベルトをし、車を発進させた。
私も慌ててシートベルトをして、シートにしがみつく。
「ちゃんと送ってやるから心配すんな」
乱暴な運転をするフジヤマの声を聞きながら、私はただただ体を強ばらせていた。