チャット恋愛注意報!!(旧)
いや、チャットと変わらないって言えば変わらないか……。
「フジヤマって、ほんっと変わらないよね」
「そう? チャットは高校生を演じてたつもりだけど」
「ううん、最初からオッサンくさかった」
「で、実物はイケメンだったと?」
「いやいや、思ってた以上にオッサンだったってこと」
イケメンに、こだわるなぁ……。
そのあたりも、まさに『フジヤマ』だ。
周りから少し離れた場所に腰を下ろし、私たちは海を見つめる。
「なぁサクラ、今日どうだった? 楽しかった?」
「あー、うん、楽しかったよ」
「そっか? あんまり喋ってなかったように思ったけど」
「それは、男3人でずーっと盛り上がってるからだよ。 でも、それを聞いてて楽しかった」
フジヤマ、YUKI、ユージ。
3人は次から次へと話題を出し、消化していくのも早かった。
チャットと同じ。
『ちょっとトイレ』で席を外し、戻ってみると全然知らない話題になってて。
その話題に加わるべくログを読み返して、ようやく追いついたと思ったらまったく違う話になってる。 なんてことはしょっちゅうだ。
まぁ、それ自体が凄く楽しいから、全然問題ないんだけどね。
「……私、みんなとリアルで会えてよかったと思う」
「おう、俺もサクラやユージに会えてよかったぜ。 クソメガネの件だけはガッカリだ」
そう言ったあと、フジヤマは『マジで女だと思ってたのになぁ』と苦笑した。
「私も、ずっと女子大生だと思ってたよ。 YUKIのトークは、ずーっとちゃんと女の子だったもん」
「だよなぁ。 なのにリアルじゃあのクールなクソメガネだぜ? アイツがパソコンの前で『私』って書いてるのは想像出来ねーわ」
「うん、確かにっ」
YUKIは男。 とわかったあとも、あんなに女の子らしかったのに……と思う自分が居る。
チャットで話していたことをリアルでもすらすら話していたから、間違いなくYUKIなんだろうけど……やっぱりいまだに信じられない。
「YUKIは、どうして女の子のフリをしてたんだろうね」