チャット恋愛注意報!!(旧)
「俺ってインドア派でさ、パソコンとか携帯をいじっていたり、本を読んでいたり……とにかくね、昔からずっと家にこもってたんだ。
だからチャットという存在を知ったあとは、すぐにのめり込んだよ」
懐かしそうに笑うYUKI。
穏やかで、どこか楽しそう。
「最初は他の人の書き込みを見てただけ。 いわゆるロム専。 で、徐々にインするようになって、少しずつその世界に馴染んでいったように思う。
色々なサイトを巡って、色々な地域の人と話して……ほとんどが年上の人との会話だったけど、それが凄く楽しかった」
そう言ったYUKIは、またジュースを口に運ぶ。
そのタイミングで私もジュースを飲み、YUKIの言葉を待った。
「あのチャットサイトで『フジヤマ』という名前を知って覚えたのは、6年前だね」
……フジヤマ。 6年前。
そのことがYUKIの口から出た瞬間に、体が一気に緊張する。
「今と同じように、彼は面白い人だった。 『あぁ、こんな人が居るんだ。凄いな』って思ったのが最初だったね」
「……それで、フジヤマと仲良くなった……?」
私の言葉にYUKIは微笑む。
……微笑むだけで、問いかけに対する答えはない。
答えのないまま、彼は言葉を続けていった。
「彼がサイトに現れるのは、いつも午後9時過ぎ。 当時はリアル学生だったから、当然と言えば当然の時間かな? 休日はもっと早い時間から来てたけどね。
それで……フジヤマを待っていたかのように、その時間になるとインする人が増えるんだ。
凄いよね。 『フジヤマ』って人が、あの世界の中心に居たんだよ」
……フジヤマって、そんなに凄い人だったんだ……。