夏のカケラ
僕が高津コーチを見ると、バットを肩にポンポンと当てていた。


「・・・そうだ・・・お前が本気じゃ無いからだ・・・」

「え?」


高津コーチはゆっくり僕に近づき、バットのグリップを僕の胸に押し当てた。


「・・・ここが、渇いて無いんだよ・・・」


僕は高津コーチの顔を見た。


「本気に・・・なってみろ・・・ヒロ・・・」


僕は高津コーチを見つめた。


「お前が最初に・・・野球を始めた頃を覚えているか・・・?」

「最初の頃・・・?」


高津コーチがバットを肩に当てながら頷いた。


「最初の頃、お前は全くボールを触った事が無かったのに、僅か一ヶ月でみんなに追い付いた」
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