夏のカケラ
戸坂はバットにスプレーを吹き掛け、スプレーを次の打者のムネオに渡した。

「行けよ、戸坂!」

ムネオが笑い掛ける。

戸坂も笑顔で親指を立てて応える。


戸坂が打席に向かう途中、声が聞こえた。

「トオル!頑張ってー!」

声の方向を見ると、そこには、戸坂の母親が手を振っていた。


母さん・・・


母親は父親の写真を胸に抱いている。


戸坂の父親は、彼が小学生の時に亡くなった。

野球は彼の父親が戸坂自身に残してくれた物だった。


父親と二人でキャッチボールをしてた頃を思い出す為に野球をしていたのかも知れない。


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