夏のカケラ
桜川は手紙を読み終えると、庭に出た。


空は本格的な夏の空を迎えていた。


そうか・・・もう、そんな季節だな・・・


桜川が教員を退任してから、早五年が経過した。


今では、のんびり庭いじりの毎日だ。


ただ今でも、あの夏を思い出す・・・


桜川が、最後に輝いた夏であった・・・


ジジジ・・・


蝉が鳴いている。


桜川が庭を眺めると、妻の泰江に声を掛けた。


「泰江」

「はーい」


泰江は台所から顔を出した。


桜川は泰江を見ると、笑いながら言った。





「ちょっと、甲子園まで行って来る・・・」






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