夏のカケラ
僕はそれを見ながら、心に思っていた事を尋ねた。


「高津コーチは昔、僕に言いましたよね・・・」

「うん?」

「・・・お前は上手くなるって・・・」


高津コーチが素振りを辞めて僕を見た。


「・・・ああ、そうだ」

「でも・・・僕は、今も下手くそのままです・・・」


僕はミットをいじりながら言った。


高津コーチは、タバコを捨て足で揉み消す。


「・・・だろうな」


僕は顔を上げた。


高津コーチは僕を見て、


「・・・俺のミスだ」


そう答えた。


その言葉が僕に突き刺さる。


・・・やっぱりか。




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