鏡の中の彼女
斎藤くんと鶴川さんから陵と夏子という呼び名で。



そんな俺が夏子のことを意識しだしたのは秋頃から。



『間もなく...』



電車のアナウンスが夏子の降りる駅を知らせてくれる。



電車がスピードを落とす。



夏子が床に置いていたカバンを持ち上げる。



随分と重そうだ。



少し支えてやると、ありがと、と笑顔が返ってきた。



「今日は送ってやれないけど...」



罪悪感を感じながら言うと、



「あ、全然大丈夫だから!じゃあ、また明日ね!」



と元気よく電車を降りていく。
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