鏡の中の彼女
それから俺は大勢の人に名前を名乗られて、パニックに陥ることになる。


1週間経つと、それなりにこの状況にも慣れた。


クラスの人の顔と名前は半分位しか一致していなかったけれど、サッカー部の同学年は覚えた。


というのも、12人しかいないからだけど。


放課後、ウェアに着替えてグラウンドに出てみて気づいたことがある。


それは、体がなまっているような気はするものの、なんとなくサッカーができるということ。


驚いたのはボールを持ってリフティングで遊び始めたみんなの真似をしてリフティングをやってみたら、その中で1番長く続いたということ。


「やっぱ陵は相変わらずうまい」


それがみんなの出した結論だった。


トレーニングの一部とか試合形式とかはできなかったけれど、できるものは精一杯やった。


「鶴川先輩、ほんとに入院してましたか?」


松田という後輩からはそう言われた。


彼もどうやらどこかを怪我しているようで、俺たちは二人で隅でやることが多かった。
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