鏡の中の彼女
姉は「飯田」さんの家の前で止まった。


「ここ、ユイとシオリちゃんの家。

覚えてる...わけないよね」


俺の顔を見て姉は笑った。


きっと俺が怪訝な顔をしていたからだろう。


「あたしたちの幼馴染の家。

さ、帰ろ!」


姉に続いて帰ろうとした、その時だった。


俺の名前を誰かが呼んだ。


「陵ちゃん!」


と。


周りを見ると、誰かが「飯田」さんの家のドアから飛び出してきた。


そして、階段を足でおりずに跳んだ。


慌ててその子を受け止める。


「どぅわっ」


自分の口から変な声が漏れる。


軽々と飛んだ割には思っていた以上に重さがあって、しかも折れた左手に衝撃が来たからだ。
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