鏡の中の彼女
よっしゃ。


心の中で喜びの声をあげる。


「学校、どう?」


この医者は、いつも最初は敬語で話し始める。


今日も相変わらずそうで、それに気づいた俺は心の中で少し笑う。


「見舞いに来てくれた友達とか、クラスメートとか、いいやつばっかりで楽しいです」


俺の目の前の人は、にこにこしながら俺の話を聞いていた。


なんだか俺は小さい子供で、大人に話を聞いてもらっているみたいな気がした。


そうかもしれない。


俺は、もしかしたら小さな子供のように何もかも経験が足りないのかもしれない。


「俺、もうサッカーの試合出ていいですか?」


「もちろん。もう治ったんだからね」


「ありがとうございます」


記憶が戻った?だとか、思い出したことはある?とかは聞かれなかった。
< 50 / 61 >

この作品をシェア

pagetop