鏡の中の彼女
「でも無事でよかった...」


その後に呟いた彼女に、俺は何も答えられなかった。





今ここに詩織が現れて俺が驚かずにいられるのは、彼女があの日に正直に自分の病気のことを話してくれたから。


この人は強い人だと思う。


「陵ちゃんもう終わった?」


「うん。まだ会計してないけど」


「じゃさ、わたしも終わったばっかだから一緒帰ろ?」


「いいよ」


詩織と電車に乗って帰る。


とても新鮮だ。


退院してからは、潤とばかり乗っていたから。


詩織は席がたくさん空いているのに、座らなかった。
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