鏡の中の彼女
コートはとても厚手のものなのに。
不釣合いな格好。
紺の女の子っぽいコートと、白に近い短い髪の毛。
まるで彼女は何かに抗っているようだった。
何か、俺には見えないものに。
ちょうどその時、俺たちの降りる1個前の駅で、詩織が寄りかかっていた方のドアが開いた。
わっ、と小さく声を上げながら彼女が仰け反る。
倒れていきそうになる詩織の手を掴んで、俺の方に引き寄せる。
「...ありがと」
「うん」
なんだか恥ずかしくなって、つい無愛想に返してしまった。
言い直そうと詩織の方を向くと、彼女はうつむいて顔を上げなかった。
だから、俺も何も言わないでおいた。
不釣合いな格好。
紺の女の子っぽいコートと、白に近い短い髪の毛。
まるで彼女は何かに抗っているようだった。
何か、俺には見えないものに。
ちょうどその時、俺たちの降りる1個前の駅で、詩織が寄りかかっていた方のドアが開いた。
わっ、と小さく声を上げながら彼女が仰け反る。
倒れていきそうになる詩織の手を掴んで、俺の方に引き寄せる。
「...ありがと」
「うん」
なんだか恥ずかしくなって、つい無愛想に返してしまった。
言い直そうと詩織の方を向くと、彼女はうつむいて顔を上げなかった。
だから、俺も何も言わないでおいた。