マッタリ=1ダース【1p集】
第8話、ボクだけの自由時間
ボクは今年で26才になる、いわゆるニートだ。
厳密にいうと、親の僅かな遺産を元手に自活しているネオニートといったところか。
ボクは大学を優秀な成績で卒業後、一流企業に就職し、マンションの一室を借りて、社会人にもなった。
なのに、である。
そこにあったものは、ボクが望む理想にほど遠かった。ボクには社会を動かし、人々を救う使命がある。こまかな手続きと人間の上下関係など、煩わしいものでしかなかった。
会社を辞め、世の中が自分を理解できるようになるまで、ボクはじっと待つことにした。
そして、そうこうしているうちに、故郷(くに)の両親が事故で揃って他界してしまい、ボクはひとりぼっちになってしまった。
ボクに残されたのは、遺言から配分された僅かな遺産だけ。それで食べていかなくてはならなくなった。
生活に使えば、遺産は忽ち無くなってしまうだろう。ボクは減らさないようにすることだけを考えた。
遺産を削って、パソコンを購入し、インターネット環境を整えた。
そして、当初の予定通り、株式のネット取引を始めた。
素人が株式投資なんて、と思うかも知れない。でもボクは確実に利益をあげた。一日一万円、それだけ儲かれば利益を確定する。多くの人間が損をするのは、単純に欲深いから、と言ってもあながち間違ってはいないのだ。
一日一万円あれば、かなり快適に生活できた。好きな漫画を買い、食べ物を買い、欲しいものを買った。
ボクはその生活の殆んどを、買い出しを除けば、マンションの一室に引き篭って過ごした。
インターネットに時間を費やし、見えない相手と議論し、ボクだけの自由時間を楽しむ。
だから、ボクは思う。
いったい、ボクの生活のどこに、文句を言われる筋合いがあるというのか。
今日も同じような生活をマンションの一室で行うつもりだった。
金を稼ぐ事に関心が偏って、少々、不規則で不摂生な生活だと言われれば、それは甘んじて受けようとは思う。
しかし、まさか自分が突然、目覚めない冷たい体になっていたなんて、流石に驚くヒマもなかったよ。
ボクだけの自由時間は、こうして、終わったんだ。
完
厳密にいうと、親の僅かな遺産を元手に自活しているネオニートといったところか。
ボクは大学を優秀な成績で卒業後、一流企業に就職し、マンションの一室を借りて、社会人にもなった。
なのに、である。
そこにあったものは、ボクが望む理想にほど遠かった。ボクには社会を動かし、人々を救う使命がある。こまかな手続きと人間の上下関係など、煩わしいものでしかなかった。
会社を辞め、世の中が自分を理解できるようになるまで、ボクはじっと待つことにした。
そして、そうこうしているうちに、故郷(くに)の両親が事故で揃って他界してしまい、ボクはひとりぼっちになってしまった。
ボクに残されたのは、遺言から配分された僅かな遺産だけ。それで食べていかなくてはならなくなった。
生活に使えば、遺産は忽ち無くなってしまうだろう。ボクは減らさないようにすることだけを考えた。
遺産を削って、パソコンを購入し、インターネット環境を整えた。
そして、当初の予定通り、株式のネット取引を始めた。
素人が株式投資なんて、と思うかも知れない。でもボクは確実に利益をあげた。一日一万円、それだけ儲かれば利益を確定する。多くの人間が損をするのは、単純に欲深いから、と言ってもあながち間違ってはいないのだ。
一日一万円あれば、かなり快適に生活できた。好きな漫画を買い、食べ物を買い、欲しいものを買った。
ボクはその生活の殆んどを、買い出しを除けば、マンションの一室に引き篭って過ごした。
インターネットに時間を費やし、見えない相手と議論し、ボクだけの自由時間を楽しむ。
だから、ボクは思う。
いったい、ボクの生活のどこに、文句を言われる筋合いがあるというのか。
今日も同じような生活をマンションの一室で行うつもりだった。
金を稼ぐ事に関心が偏って、少々、不規則で不摂生な生活だと言われれば、それは甘んじて受けようとは思う。
しかし、まさか自分が突然、目覚めない冷たい体になっていたなんて、流石に驚くヒマもなかったよ。
ボクだけの自由時間は、こうして、終わったんだ。
完