ダカラ、my girl♥
「ボートにでも乗ってる感じがして
女の人の声だけが聞こえたの・・。」
夕焼けの空を、
鞄を前で持って見上げてる。
その横顔の、少しへっこんだ頬が
ちょっと痛々しくも見えた。
彼女を抱っこして思ったけど
古幸さんは今、太った状態じゃない。
普段学校でベンチ・プレスをする
お陰でその体重も想像がついた。
酷いリバウンドを避けなきゃな・・。
「ねえ? まだ、自転車の許可は
学校に返してないんでしょう?」
「え・・・ウン。」
「じゃ、明日からまた・・どう?」
「・・・ウン。あ・・。」
赤い顔は
夕焼けのせいにしといてあげる。
その代わり、手ぐらい繋がせて?
「・・古幸さんの手、ちっちゃい。」
「粟国くんの手が
大き過ぎるんだってば・・。」
「・・今日ね?」
「・・・え?」
「乱暴なコトしてゴメン。」
布テープで・・
強引にお昼ごはん食べさせたりして。
「ふふっ・・でも、嬉しかった。
そこまで心配してくれてたんだって。」
「そりゃするさ・・。」
ああでもしなきゃ、
話も聞かずにどこかへ行くだろう?
だから皆で相談していたんだ。
「今日もちゃんと食べないと怒るよ?」
彼女の家の前に着いて、手を放す。
古幸さんが差し出した小指を絡ませた。
「もう大丈夫・・。」
「だよね・・?」
指が離れて上を向いた彼女の額に
唇をひとつ、ゆっくりと落としてた。
「帰ったの? ア・・・!」
バーンとドアを開けたのは
彼女のお母さん・・妹とよく似てる。
「あっ、あのっ。」
それは絶句してる母親に言ったのか
僕に言ったのか。
陽に焼けたみたいに赤過ぎる顔で
ウロたえてる彼女。
もうパンク寸前らしい。