ダカラ、my girl♥
頭に乗っかった感触に見上げる彼女。

その手を視線で追い、
テーブルに着こうとした僕を
アホ面で見上げてる男二人。

なんだ、意外とタッパがないな?

「遅くなってゴメンね。」


その女のコ、鬼無さんはバサバサと
音がしそうな厚い睫毛でまばたき。

ハッとして、やっと言葉を発した。


「お、おせーよ!」


僕は席に着いてチラと
男達を見やるだけでただ、無視。

数秒ホッたらかしにしてるだけで
白々しく通りに去って行った。

その後姿が人波に呑まれて行くのを
見届ける。

少しムクれた様な彼女の顔、そして
テーブルの上のペーパーバックは

"The Wonderful Wizard of Oz"

僕の視線がそこに落ちると彼女は
慌ててそれをバッグにしまった。


「・・この前は有難う。」

「・・何もしてないし。
こっちこそアリガト・・助かった。」


本当は言いたくなさそうなお礼。

彼女は氷で薄まったコーヒーを
ストローで一気に啜って席を立つ。

カップをゴミ箱に落とし込むと
さっさと通りへ降りて行った。


「ねえ? ・・ダブる気なの?」


自転車を引っ張って来て
横へ追いつく僕に、

これ見よがしのウザそうなため息で
歩くスピードを緩めてた。


「辞めようか悩んでる・・。」


一度、
睨み付けた事もある気拙さもあってか、
けして僕を見ようとはしない呟き。


「辞めたくない理由もあるんだ?」

「・・・まぁね。」


茶髪のウェーブが揺れる横顔、
その視線は下向きで肩が丸まってる。

一見、ハデ顔の美人。
そんな鬼無さんなのに堂々さがない。


「なら・・・出ておいでよ。
江崎くんも最近は皆勤賞モノだって
担任が泣いて喜んでるんだから・・。」


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