ダカラ、my girl♥
「もう寝るの? まだ9時よ?」

「うん・・・。」

「ま、ごゆっくり。」


バタン・・。

スリッパの音が遠ざかる。
そっとしといてくれるらしい。

ほっ・・と瞬間、
喜んでた母に申し訳なく思う。

ごゆっくり・・・こうしてろって事?


「いいお母さんだね?」

「!!」


がば!


「な・・・。」


学習机のイスに深く腰を下ろしてたのは
白いパーカーと、
長い脚のジーンズ姿の粟国くん・・。

どれだけ急いで来たんだろう
額が汗でテカッてるなんて珍しい。

側にあった私の携帯を取り、
電源を入れると元に戻している。

切るなと言ったのに・・
そう言いたげに顔が怒っていた。


「せめて、あと
一言だけでも言わせてくれない?」

「・・・・。」

「さっきの彼女の事・・"好き"じゃなく、
"とんでもなく大好き"になっちゃったんだ。」

「・・・・!」

「・・それだけ、どうしても
今日中に言っておきたくて・・じゃあ。」


涼しい顔のまま
ギシ、とイスを立つと机に戻してた。

私は・・部屋を去ろうとする彼に
泣きたくなるくらい腹が立ってきた。

振り回されるのはもう嫌だったから。

ハッキリ言って貰わないと
勘違いだったりして後で泣くのは私だ。


「その彼女に言えばいいじゃん・・。」


自信などある筈もなく半信半疑で
そんな怒りも呟きにしかならなくて。


「・・・・。」


トレーナーのポケットに手を入れ、
振り向き・・

表情も変えずに抱えていた大きな袋を
ベッドの私に手渡たすのだ。


「少し・・遅かったのかな。
たった今、フラれたみたいだ・・。」


ふわりと頭から離れた手はもう、
ドアノブを握ろうとしている。




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