ダカラ、my girl♥
「さすがだねぇ・・前回のテスト、
学年トップの成績だって?」


何でこんな日に限って教材係り?

チャイムが鳴り、後片付けをしている
背後に近寄ってきた男に振り返る。

「・・・他のクラスの授業でも
女の子口説いたりしたら承知しないよ。」

僕はそう言って指を胸板に突きつけ
念を押した。


「で、何しに来たんだよ。」

「お前に人生の楽しみ方を教え、」

「帰れ。」


この男らしい言い草である。

自分も教室に戻ろうとすると彼は僕に
ファイリングケースを差し出してきた。

「な・・、なんだコレ・・! 」

訝しげにそれを開いてギョッとする。

アルバムみたいな僕の写真がビッシリ。

もちろんヌードでもないんだけど・・。


「父さんはいつもそれを持ち歩いて
毎日ニヤニヤ眺めちゃったりしている。」

「この変態が・・・!」

「可愛い息子を想って何が悪い?」


娘ならともかく・・気持ち悪い。

・・想ってる?
なのに5年は放ったらかしだ。


「・・でね? ソレを見たクラブのボスが
お前を凄ーく、気に入ってさぁ・・。」

「勝手にブックにしたのか? それに
この写真、母さんからパクっただろ!!」


ブックとはモデルが自分を
売り込む為の写真集とでも言おうか。

写真は母が撮った僕の写真の数々。

新しいレンズやアイテムを試す時、
僕を被写体にテストした時の物だった。


「まあ、細かい事言わずに。
建築の勉強しながらモデルの仕事って
のも悪くないと思うんだ。一度・・。」

「帰れ。(-゛-メ) 」


よく言うよ・・。

そうやってアンタは堕落の一途を辿り
弁護士の道を捨てたんじゃなかった?


「根無し草で、女と浮名を流すばかりの
怠惰な生活が人生の楽しみだと思ってる
アンタが・・、父親ながらとても不憫だよ。」


教室に戻ろうとした僕の背中に
溜息を吐いて彼は呟いた。


「・・・そうは思ってないな。」


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