ﾀﾞｶﾗ､ｍｙ ｇｉｒl♥

「とにかく・・生きる世界が違う。
もう帰ってくれ。」

そう吐き捨てて教室へ戻っていった。

僕には僕のなりたい自分がある。

煌びやかな世界で生きる父にとっては
ちっぽけだろうが

僕は・・普通の幸せが欲しいんだ。


「「「「　お帰り　」」」」

「ただいま」


教室には音楽コースを取っている
三池さんと江崎くんも戻って来てた。

江崎くんはあの偽シスターズから
父の事を聞いて凹んでいるらしく
机を抱きしめて悶えている。


「・・・大丈夫?」


そんな時、
古幸さんは心配顔で僕を見てた。

取り乱しっぱなしで・・
みっともなかったな。


「平気、何でもないよ。」


彼女にそう笑い掛けたものの
その日はずっと集中力に欠けていて。


「どうしてそんなに嫌いなの・・?」


一日の授業を終え、僕の部屋で彼女と
一緒に宿題をやっていたんだ。

「マザコンって思われるから
あんまり云いたくなかったけど･･。」

コーヒーをいれて出すと
僕は腰を落ち着けて躊躇いがちに言う。


「浮気ばかりしてる父がたまに、
フラリとやって来てその･･夫婦の営み?
スるだけシて翌日には帰って行くんだ。」

「・・エ。す、するだけ・・?
親子の接触は何もないの?」

「ハグとプレゼントを与えて終わり。
それから直ぐ、母を担いで寝室へ
連れてっちゃうんだからね・・。」


僕は母の仕事の都合上、あちこちを
転々とする生活を送っていた。

父がやって来た時だけ女になる母を
僕は子供ながらに見るのが嫌だった。

2人が納得した関係でいられるなら
それはそれでいいんだろうけど・・、


「父としては勿論、男としての彼を
許せない。僕に言わせればあの男は･･」


彼女がマグからまん丸にした
目だけを見せて、遠慮がちに
コーヒーを喉に流し込んでいる。


「育ちのいい、誘拐犯だよ。」


そのお陰で僕が生まれたんだ。