ダカラ、my girl♥
粟国くんは"あっちだ"と指を差し、
ただでさえコンパスの違いがあるのに
私を引きずる様に連れて行く。

そんな中、ただ焦りが回って
言葉も出せないで引っ張られて

オラウータンか、捕まった宇宙人みたいに
見えている気がして恥ずかしい。


「や・・!」

ついに足を踏ん張って、靴屋の手前で
手を繋いだまま向かい合っていた。


「・・僕が選んだヒトの事を
古幸さん自身が否定してどうするの?」


静かな声だった。

怒りを露にせず、目は悲しそうで。

挙句に泣きそうになってる私を見て
首を傾け溜息を吐いてる。


「つまんない事、言わないで。」

「・・・・。」

「約束できる?」


バックの肩紐を握り締めてる私の手に
彼は小指を立てて、コツンとぶつけた。

顔を見上げると和らいだ表情。


「親父が・・帰り際、言ってたよ。」

「え。」

「可愛い彼女にヨロシクってさ・・?」


そうすると更にその小指だけ
ピョコンと出たコブシを突きつけて。


「僕の彼女だって言うなら・・、
カノジョらしくちゃんと、
カレシとして接してくれない?」


( これって・・・あ! )


応用だ。
お父さんから聞いちゃったんだ。

そう言えば内緒とも言ってない。

それが解ると
襟の中が異様に熱くなった。


( "僕の彼女・・"? )


「早く。」

「・・・・・。」


クッ・・! と、笑われて。

ポンプ式に上がって来る血の気。
想像するのは仮装大賞の点数ランプ。

私の指が彼の所へ届いた頃には
オデコの生え際まで熱に焼けていた。


「じゃあ、入ってよし。ふふっ。」


店内にやっと入ると私は手の平で
パタパタと顔を扇いでた。


粟国くんは・・ある意味スゴイ。

店員さんも、買い物途中の女の子達も
私達をじろじろ見てたのに・・


「ん。このチャイナ風、可愛いな。」


( ・・って、無視だから。)


だけど、彼の言葉とこの手の暖かさは
信じられる確かさを
私に与えてくれた気がした。

さっきのコの事、
きっと近いうちに話してくれるよね・・?




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