Glass slipper☩シンデレラボーイは甘く永遠に腹黒に☩
季節の変わり目というのも然ることながら、今百貨店がセールをしているので、それに便乗して店の売上目標もいつもの月より若干高めに設定されている。
日割り目標はクリアしているみたいで、月割り売り上げ目標もこの分なら前倒しでクリア出来そうなの。
セール中だから百貨店全体の来客数も多い。
休んだ分、ガンバってお仕事しなきゃ。
乱れた陳列を直しつつ、お客様に声を掛けられ笑顔で対応。
さりげなく店内の在庫を確認して、残り少なになった商品は纏めて、百貨店の関係者用裏通路の店ごとに割り当てられたブースから運んで来なきゃいけない。
「…この色、サイズがもうないんですかぁ…」
業務をこなしながら、ちょっとがっかりした声にそっと後ろを見れば、一組のカップルがスニーカーを手にしていた。
どうやら彼氏のスニーカーを一緒に選んでいたみたい。
「スミマセン。」
対応していたリノちゃんが申し訳なさそうに謝る。
仕方がないね、と帰る素振りを見せたお客様に「あ。ちょっとお待ちください。」と朗らかな声がかけられた。
木戸さん。
「残念ながらこのタイプは現在現品限りなのですが……コチラは如何でしょう?お客様がお気に召したタイプと雰囲気が似ていて、これも中々人気の高い型なんですよ。」
「あら。コッチのもイイじゃない。寧ろ私はコッチの方が好きかも~。」
「ああ。値段も…うん、さっきのとあんまり変わらないな。許容範囲。」
「これにします。」とご機嫌に即決したお客様に、木戸さんも「有難うございます。」と嬉しそうに笑顔を返す。
そんなやり取りに私はしょうこりもなくキュンとしちゃうの。