Glass slipper☩シンデレラボーイは甘く永遠に腹黒に☩


「ああ。来たか。」


僕を認めて僅かに眉を持ち上げたのは須藤。


「君も来てたの。」

「オマエと違って俺の土曜日は大抵出勤だ。」


営業といえども彼に限っては管理職にも片足を突っ込んでいるのでそれもありなん。

でも一応この会社って土日休みなワケだから、仕事が遅いんじゃないの?なんて厭味はとりあえず置いておく。


「それより君、昨日あんな時間に美久ん家行ったの?いくら僕が一緒とはいえ君ね―――」

「その話は後にしてくれ。オマエに会いたいというお客様をお連れしている。」

「…客?」


須藤を追うように女性が姿を現す。

黒い艶やかな長い髪。

切れ長の涼やかな瞳が印象的な中々の和風美人だ。

社会人として一応の礼儀に挨拶はしてみるものの、誰か分からないのだから怪訝な顔にもなる。

それを見越したみたいに須藤が紹介した。


「久寿軒製薬の久寿軒マエリさんだ。」


僕は久寿軒製薬の名に瞬間半笑いになりそうになったのを堪えて、営業スマイルを取り繕った。


…ああ。あれか。

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