Glass slipper☩シンデレラボーイは甘く永遠に腹黒に☩


「分かりました。誠心誠意作らせて頂きますね。」


この忙しい時にっ、…という思いは呑みこんで、笑顔で受諾する。

元より僕に拒否権などないのだから。

須藤だって、キャラの著作権はさておき、ここで生み出した物をあえて他社へ回させるような野暮な仕事はしないだろう。

(自分の身をも売ったキャラなわけだし。笑)

僕の返事に久寿軒さんが表情を輝かせる。

物静かそうな和風美人だけど、笑うと華やかさが際立つ。


「私、柏木さんのファンだったんですの。こんな素晴らしい造型師さんとお仕事が出来るなんて夢みたいだわ。」


…造型師…?

僕はいつからそんな御大層なものになったんだか。

久寿軒さんのテンションの高さに微苦笑を浮かべる。


「一年前のクスリンジャーからその才能には一目置いてましたの。子供向けのゆるキャラの発案の多い中で、クスリンジャーは一際異彩で。この突きぬけた発想力は凄いって、父も感心しておりましたわ。」

「それは、有難うございます。」


須藤がニヤッと人の悪い笑みを浮かべる。


「目を付けたのは才能ばかりじゃないらしいぞ。一年前の打ち合わせの際に廊下でオマエを見かけたのだそうだ。」

「も、もうっ。ヤダわ、須藤さんったら。」


少し焦ったふりで須藤を小突く久寿軒さんと、それを食えない笑顔で交わす須藤と

……目の前の茶番に僕は溜息を噛み殺す。


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