Glass slipper☩シンデレラボーイは甘く永遠に腹黒に☩
事情を話すよう水を向ければ名取さんは観念したように話しだした。
彼女が美久の勤める靴屋の社長令嬢である事や、その親に近々お見合いをセッティングされた事、そのお見合いを潰すための適当な恋人役を探している事。
僕は少し考える間を置いて、ニコリと笑った。
「そういう事でしたらうってつけの男をご紹介いたしましょう。」
「そうしてくれるとコッチは助かるけど…大丈夫なわけ?私としてもフリとはいえあんまり安っぽい男を連れ歩きたくないんだけど。」
「それはご安心下さい。僕よりずっと上等な…貴女の御所望通りの男ですから。尤も性格まで評価は出来ませんが。」
名取さんはほんの少し思案の間を置くだけして「分かったわ」と頷いた。
「では、その代わりに―――」
「ええ。分かってるわよ。」
今更、と言わんばかりに肩を竦める名取さんにニコリと笑う。
「契約成立に。」
乾杯、と重ねたグラスから仄暗い策略の音が小さく鳴った。