Glass slipper☩シンデレラボーイは甘く永遠に腹黒に☩
「や、……て、店長もまだだしっ、なんならお先に店長に―――」
歯切れ悪く口籠れば、店内をアチコチと忙しなく動き回っている店長から
「アタシはいいわよ~。先にいってらっしゃいなー」
という声が聞こえてきて、項垂れた。
…店長もバカっ!!
オカマみたいなくせに乙女心が全く分からないんだから~。
「じゃ、お言葉に甘えてそうさせてもらうか。行くぞ、柏木。」
私がもごもご口籠るのに被せるように木戸さんがあっさりと英断してしまった。
「どこ行こうか。従業員用の休憩室でもイイが、テナント入るか。この時間なら少しは客も掃けてるんじゃないか。」
「ど、どこでも、イイです。」
木戸さんとご一緒なら。
どうしよっかと悩む木戸さんを横目にチラリと見て慌てて反らす。
気まずい…けど、二人でご飯なんてシチュに性懲りもなく喜んでしまう私。
我ながら単純。
と、通路に出た瞬間だった。
「木戸さぁ~ん。」
きゃっきゃと甘ったるい黄色い声を上げて女性が一人駆け寄った。
この間木戸さんと一緒だったアパレルの子。
「お疲れ様でーす。木戸さんも今から休憩なんですかぁ?偶然ですぅ。私もなんでご一緒しませんか。」
そっか…木戸さんには彼女がいるんだったよね。
人目を憚らず木戸さんに擦り寄る彼女に私は居たたまれず俯く。
もう木戸さんのコトは諦めなくっちゃ…。