Glass slipper☩シンデレラボーイは甘く永遠に腹黒に☩

美久は一度大きく深呼吸して、勢いよく言った。

それは僕の危惧とはまるで別の、だけど、僕に衝撃を与えるには十分すぎるものだった。



「私の恋愛の邪魔したの、どうして?」



なんで…………それを…?

動揺を隠すのは得意だけど、美久には通じない。

愕然とした美久の顔に、僕の些細な動揺を見抜いたのだという事が知れた。

もう、オシマイ。

足元から崩れるような消失感。

ずっと気付かれないままで済むなんて思ってたワケじゃない。

気付いた時、美久に嫌われる事も分からなかったワケじゃない。

だけど、…だけどやっぱり僕は美久が誰かの物になるなんて嫌だったんだよ。


こんな時に、久寿軒さんが言った言葉が脳を掠める。

『でも…貴方の気持ちが変わらずとも、相手の方もそうだとは限りませんわ。』

さすがにアレは刺さった。

確かにその言葉通り。

僕が幾ら美久を好きでも美久は僕じゃない誰かを選ぶ。

どれだけ絆を深めてみても所詮美久にとって僕は弟で、僕の物になってはくれない。

『どうせなら駄々を捏ねてみたらどうだ。』

失意の僕に然もあっけらかんとそう言ったのは須藤。

美久に慕われたくて頼りにされたくて“イイ弟”を続けてきた。

だけど、どうせこれで嫌われてしまうなら―――

これで美久が離れてしまうのなら―――……

息苦しい胸にほんの少し空気を呑みこんで、その言葉を吐き出した。









「僕と結婚して。」

< 122 / 333 >

この作品をシェア

pagetop