Glass slipper☩シンデレラボーイは甘く永遠に腹黒に☩
悠里が籍を抜きたいと言ってきたのは二十歳になった時。
『美久が好きなんだ。』と言って。
『この家庭に不満があるわけじゃない。血が繋がってないとはいえ義父さんの事も好きだよ。だけどそれよりもっとずっと、美久が好き。』
『美久に気持ちを押し付ける気はナイよ。美久が僕を弟だと思っている以上、僕は弟であり続ける。それでも……』
―――ほんの少し我儘が許されるなら、僕は弟じゃなくて一人の男でいたいんだ。
そんな言葉にドクンと胸が高鳴る。
それがじわじわ広がってココロもカラダも温かくなった。
いっそ熱いくらいに。
知らなかったよ。
悠里がそんな風に私の事を思ってくれてたなんて。
それなのに言葉通りちゃんと“イイ弟”で、きっと楽しいばっかりじゃなかったはずなのに。
『ちやほやされている王子様を隣で見続けるのは結構辛いよ。』
思い出したシンデレラの時の会話は…あれは悠里の気持ち、だったんだね。
隣にいるのに振り向いてくれない王子様に悠里はどれだけ傷付いたんだろう。
私はどれだけ悠里を悲しませたんだろう…。