Glass slipper☩シンデレラボーイは甘く永遠に腹黒に☩
悔しげに顔を歪ませる彼女と、少し困り顔の木戸さんと…
途端に幸せな妄想で舞い上がる私と。
「木戸さんってスキッとして見えて意外に押し弱ぇ…」
「見てて歯痒いですね。」
「あ~ん、あの小娘っ。今がチャンスの時だってのに何ぼや~っとしてんのよぅ。」
「てか、あの女ウザッ。およびじゃないっつーの。」
「「麗那さん、それは同族嫌悪ってやつでは…?」」
店前だったが故に従業員一同が固唾を呑んで見守りつつ、そんな駄目だしをしているなんて露知らず―――。
膠着状態の空気にふいに投擲された柔らかな声。
「あれ?タイミング悪かったなぁ…ひょっとして休憩なの?」
え?
何でこんな時間にこんなトコロに?
不思議に思いつつも私がその声に笑顔になってしまうのはもはや条件反射くらい当たり前のコト。
「悠里っ。」
振り向けばやっぱり悠里が相変わらずの笑顔で立っていた。
その整いまくった容姿に周囲のお客は勿論、店員諸々唖然となって釘付けになっている事など露知らず―――。
「え~?どーしてどーして?お仕事は?」
「ん。本来僕は設計なのに無体な営業の先輩の命によって外回りに付き合わされたからね。ご褒美にちょっと寄り道するぐらい許されるでしょ。」
「えへへ。スーツ姿も様になっていて格好イイね。」
「ありがとう。」
気構えのない距離感は私達の普通で。
ぴょんぴょん近づいて行った私を、悠里がやんわり腕に囲うのももはや普通。
周囲が絶句している事もその意味も、私はさっぱり気付かないばかりか、分かっても理解出来なかったに違いない。うん。