Glass slipper☩シンデレラボーイは甘く永遠に腹黒に☩
これは都合が付かない日を除いて、外せない日課の一つになっている。
美久も心得たもので視線はテレビドラマに釘付けに、ソファーからラグの上に移動する。
悠里は後ろのソファーに腰を降ろし、徐に美久の髪を纏め始める。
腰ほどに伸びた髪。
指で梳く度にうっとりと溜息が洩れる。
日ごろの手入れのお陰で亜麻色の艶を保っているが、少し猫っ毛でゆるゆると独自に柔らかなカーブを描く。
そのくたっとした柔らかな手触りも悠里のお気に入りだ。
何よりその長さ。
出会ったばかりの美久は肩に付くか付かないかくらいのショートボブだった。
そこから伸ばし続けてきた髪は、まるで二人の時間を凝縮しているかのようで、見るだに幸せだし愛おしく思う。
まずはドライタオルから…洗い晒しでまだ湿っている髪を丹念に絞っていき、保湿成分を含んだ洗い流さない類のコンディショナーを滲ませて、ようやくドライヤーを当てる。
ほんわり温かな微風に晒され、長くしなやかな指に髪を梳いてもらう心地は至極だ。
美久は時折悠里の足を肘掛代わりに身も心も委ねて極楽気分。
ドラマがCMに代わって、美久の口を吐いたのはふとした思い付き。
「髪切ろっかなぁ~。」
サラサラした長い髪がトレードマークだった某女優が新しい役の為に髪を切ってテレビに映っていたものだから。