Glass slipper☩シンデレラボーイは甘く永遠に腹黒に☩


「…えーと…これだけ長いんだから枝毛の一本や二本くらいあるんじゃないかな?というより、この長さでこれだけ状態がイイのは悠里のお陰で……

「アリエナイよ。僕がこれだけ手を尽くしてるのに枝毛とか…っ。信じられない…。」


独り事のように呟き悠里は手を戦慄かせる。


「この謀反者め…僕に対する反逆とみなし、可及的速やかに成敗してやる。」


…いや、謀反者って…。

言うが早いか悠里はぱっと立ち上がった。


「あ。ゴメンね美久。今すぐ毛先数センチ切らせてもらうからっ。用意するから待ってて」


さっき一㎜たりとも譲らないって……と美久の脳裏を突っ込みが掠めたたが、悠里の熱意(?)に気押されて口にする事は無かった。




☩ ☩ ☩

なにはともあれ、思い付き通りに一応髪を切ったのでイメージチェンジは成功とみなし、ご満悦の美久。

社交辞令でも良いから『似合う』とか『ちょっと雰囲気変わりましたね~』などという言葉を是非頂きたい。

―――が。



(ぅわ~…相変わらずあの弟さん、溺れてるなぁ…)


従業員一同、それぞれの仕事に従事しながら耳にしていた会話に心中で思う事と言ったらそれしかない。

溺れてるというより、海溝を自ら素潜りしていると言った方が正しいかもしれない。

ひたすら唖然とするだけの従業員達に、美久はガックリとした。


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