Glass slipper☩シンデレラボーイは甘く永遠に腹黒に☩
「…か、柏木。その方は?」
そんな言葉に我に返り、ちょっと引きつった木戸さんの顔にはっとする。
私ってば紹介もしないで二人で盛り上がっちゃって、大人としてハズカシイなぁ~。
「あ。あの、スミマセン。彼は―――」
「美久の弟の柏木悠里です。いつも姉がお世話になっております。」
「…おとうと…?」
「はい。弟ですけど、何か?」
ふっと微笑む悠里に木戸さんは「いや…」と言葉を詰まらせる。
悠里はそんな不思議な木戸さんに構うことなく、私に向き直った。
「ところで今から休憩だった?折角だから靴を買っていこうと思って、姉さんに選んでもらいたかったんだけどな。」
「そうなの?」
ぴこん☆とあるモノを思い出した私は悠里をぐいぐい店の紳士靴ブースへ引っ張り込んだ。
「これ!!絶対コレ!!入荷した時から悠里に絶対似合うって虎視眈々と狙ってたの!!」
「虎視眈々と、ね…ふふ。まるで肉食獣みたいだね。」
悠里をフィッティング用のソファーに座らせ靴を合わせてみる。
つま先の切り替えが真一文字のストレートチップ。
全体的にスマートなイメージの、ほんの一部分にだけ蛇柄の入った革靴。
クラシカルの定番の形でお洒落だけど派手過ぎず、仕事にもプライベートにもバッチリ。
何より悠里の雰囲気にピッタリなの。