Glass slipper☩シンデレラボーイは甘く永遠に腹黒に☩
後数センチで触れる
―――と思った刹那、遅いとばかりに久保塚の指に指が絡んできた。
しなやかな長い指。
手さえも意匠を凝らした人形かのように整っている。
……が、
想像よりちょっと大きい気がしないでも―――
「い゛っ・たたたたぁぁぁぁぁっっ!!」
突如襲った激痛に久保塚はエビ反りに絶叫を放ち、そこで目にした者に「あ゛」と瞠目した。
「かかか柏木、さんっ」
てか、手が痛い……っ!
突如振って湧いたリアル王子と揶揄される会社の先輩は、人の手をミシミシと言わせてるとは到底思えない優美な笑顔をニコリと傾けて言った。
「こんなトコロで久保塚君と会うなんて凄く珍しいね。」
「ぅぁ゛っ、ハイッ、ああぁ、そーだ!!書類をお届に…!!」
右手の激痛に耐えながら、慌てて鞄からファイルを取り出して差し出す。
そんな二人のやり取りを瞑らな瞳で見詰めていた彼女が、悠里に尋ねる。
「悠里、お知り合いなの?」
てか、お二人こそお知り合いデスカ?
しかしこの時点で久保塚は薄々気づいていた。
以前から柏木悠里という先輩が、女避けの為にあたかも恋人、もしくは妻の如くに口にする存在。
幸村は『絶対恋人だ』と言い張っていたが、義姉と知っている久保塚はハッキリ言って半信半疑だったけれども―――