Glass slipper☩シンデレラボーイは甘く永遠に腹黒に☩
自販機でペットボトルの紅茶を買い、人の少ない落ちつける場所を模索していた私の背後で不意に人の気配を感じた。
わぁ…誰?綺麗な人。
お店のお客様かな…。
不思議に思いつつもまじまじと…いっそ見惚れていると、その綺麗な女性がニコリと微笑んだ。
「はじめまして、柏木美久さん。悠里さんの事でお話をしたいんですけれど少しお時間頂けますかしら。」
ここではなんですから、と移動したのは利用者も少ない階段フロア。
お疲れでしょうから、と彼女に勧められて踊り場にある三人がけの椅子に腰を降ろす。
私の正面に立った女性は、端然と言った。
「単刀直入に言わせていただきますが…そろそろ悠里さんを解放していただけませんか、お姉さま。」
解、放…?
想像もしてなかった言葉にただひたすら目を見開く。
この人は一体だぁれ?
何でこんな事を言うの?
それにお姉さま………って。
「あ、あの…どういう意味ですか?それに私…確かに悠里の義理の姉でしたけど、今は…」
彼の奥さんなんです。
それを確認するかのように私が指で触れる左手薬指の指輪に彼女は一度視線を落とし、ふっと同情的な笑みを浮かべた。
「彼は優しくて世話好きだから貴女が心配で仕方ないみたいですわね。でもそれは単なる独占欲…単なる重度のシスコンであって、恋や愛ではないですよ。」
「そんなこと……」
反論しようとした私にあっさりとトドメを刺した一言。
「だって、お二人がまだ結婚されてないのがその証拠じゃありません?」