Glass slipper☩シンデレラボーイは甘く永遠に腹黒に☩
それじゃあ…と言って立ち上がった悠里は私の手をとり、徐に女性用のブースの方へ向かった。
私を椅子に座らせて、一足の靴を持ってくる。
しなやかに長い指のついた大きな手が壊れモノを扱うようにそっと足を持ち上げる。
靴を脱がせ、そこへ持ってきた靴を履かせる。
「わ。可愛い。」
「うん。ピッタリ。」
姿見に映してみて思わず言った言葉に悠里も笑って同意する。
エナメルのサーモンピンクのパンプス。
踵は木製でがっしりと太くて、それほど高くなくて、安定感も抜群。
ちょっと昭和モダンなカンジで可愛いの。
あんまり自分じゃ選ばない色なので無意識に視線から除外していたけど、今日の服に意外にも合ってるし……可愛い!!
「じゃ、姉さんが僕の靴をプレゼントしてくれる替わりに、これは僕から姉さんへのプレゼント。」
耳元に落とされた甘やかなセリフに驚いて首だけ振り向けば、肩越しに悠里の柔らかな笑顔があって。
「い、いいの!?」
「うん。凄く似合ってるし。それに…コッチの方が絶対にイイよ。足疲れたんでしょ?」
「…あ。」
「靴を綺麗に見せようって努力は買うけど、それは何も華奢なヒールばかりじゃなくてもいいんじゃない?」
職業柄、靴をキレイに履きこなそうって意気込みで、今日はヒールの高い華奢なミュールを履いてたんだ。
だけどさすがに今日は忙しくバタバタ動き回ってたお陰でふくらはぎからなにから辛くなって来てたんだ。
…悠里、気付いてくれたんだ。