Glass slipper☩シンデレラボーイは甘く永遠に腹黒に☩
「所でアイツは今日遅いのか?」
その言葉にはっと顔を上げる。
夕食後、何気なカンジでチューハイが登場し何気なカンジでテレビが付けられ、何気にゆるゆると過ぎていた時間。
「あ、えっと……今日は同僚と飲みに行くって言ってて…」
ふぅん、と言った木戸さんはじっと私を見詰めていて、その瞳に心中を見透かされているのを悟った私はチューハイの缶をぎゅっと握って俯く。
「私最近、避けられてたの、かな。……悠里、仕事が忙しいってちょっと遅かったりして…。し、仕事が忙しいのは本当みたいなんですけど…」
迎えに来てくれて、一緒にご飯食べて、スキンケアしてくれる相変わらずの日が全くなかったわけじゃないけれど。
そういう日も悠里は家で遅くまで仕事をしてた。
私をお座成りにあっさり仕事に向かってしまう悠里にちょっと寂しいなんて思ったのも事実……。
でも私だって悠里には無理して欲しくないし、邪魔したいわけじゃないの。
『えっと…悠里?仕事忙しいなら無理して迎えに来なくても大丈夫だよ?仕事、お家より会社でやる方がはかどるよね?』
『え?ヤダよ。美久と一緒にいる時間が僕の幸せなのに。僕はそこ削って残業なんて絶対しないよ。』
間髪入れない返事に、聞いた時は子供みたいなんてちょっと呆れたりもしたけど。
悠里が一緒にいたいって思ってくれてるのが嬉しかった。
嬉しかったけど……
悠里にとってそれは恋愛じゃなかったんだ。