Glass slipper☩シンデレラボーイは甘く永遠に腹黒に☩
「ただいま」
控えめに声を掛けて家に滑りこんだ僕は、あれ?と眉を顰める。
美久が寝ちゃってるんだとしたらリビングが暗いのも道理だけど……人の気配をまるで感じないのは気の所為だろうか。
「……美久、もう寝ちゃった?」
寝ている場合を想定して声を控えながらも、不安に駆られて美久の部屋のドアをそっと開いて、愕然とした。
いない………。
暗い部屋に美久の姿はなく、慌てて部屋中を探してみたけどどこにもいない。
時計を見ても仕事に拘束される時刻はとっくに過ぎてる。
この間美久が会社の同僚と飲んでた時間も比べ物にならないくらい遅い。
「えっ…なんで…?美久…っ」
途端に胸が騒いで、落ちつかなくなる。
どこにいるの?
そうだ携帯。
居場所を確認してっ…電話した方が早いか…!
「あっ!」
ポケットから取り出そうとした携帯は引っかかって飛び跳ね床を滑って行く。
慌てて拾おうとして、テーブルの角にしこたま足をぶつけた。
悶絶。
涙目になりながらようやく携帯を手にして、自分の不甲斐なさに思わず笑いたくなった。
…ねぇ、
美久は知らないでしょ。
美久の存在が分からなくなるだけでこんなに取り乱す僕の事なんて―――。