Glass slipper☩シンデレラボーイは甘く永遠に腹黒に☩
うろたえる私を置いて、木戸さんが玄関に向かう。
「夜分遅くまでご迷惑おかけして申し訳ありません。美久を迎えに参りました。」
低すぎず高すぎず甘い声音を響かせて
玄関先に柔らかく微笑む悠里が現れた。
すぐにでも飛びつきたい心境なのに……身体が動かない。
そんな私を見て溜息を吐いた木戸さんが私の方へ足を向ける。
が、直ぐに止まった。
悠里が木戸さんを掴んだから。
顔を戻した木戸さんに悠里はにこりと笑顔を傾けて言った。
「何故美久を泣かせたんです?」
………へ?
泣いた?
そこで思い出すのは百貨店での事。
……えぇっ!!
ぽろっとしか泣いてないし、あれから随分時間も経ってるのにっ。
悠里には分かっちゃうの!?
これには木戸さんも唖然としたみたいで一瞬目を丸くしたものの、直ぐに忌々しげに腕を振り払った。
「言っとくが、アイツはふにゃふにゃして見えても俺に苛められて泣く程弱かない。少なくとも俺じゃ泣かせられない。」
「でも泣かせたんでしょう?何故です。」
確信的に言ってじっと言葉を待つ悠里に木戸さんは憮然とした顔で言う。
「……アイツを泣かせられるのは俺が知る限りは一人だけだ。」
一瞬虚を突かれたみたいに無表情になった悠里がゆるゆると眉を顰める。
「…………………僕……?」