Glass slipper☩シンデレラボーイは甘く永遠に腹黒に☩
ぎゅうっと腰に回した腕に力を込めながら悠里が溜息と共に零した。
「……ね。美久は欲しくて仕方なかった宝物を手に入れたらどうする?」
へっ?
「それはキラキラしててとっても脆いんだ。汚れるのも壊れるのも厭わずに肌身離さず持ち歩く?それともショーケースに入れて誰にも見られないように隠しておいてこっそり眺める?」
……悠里ってば例え話が好きだね。
そんなツッコミをしながら悠里の言った宝物を思い描く。
そして頭に浮かんだのはガラスの靴。
王子様が自分を見付けてくれた重要なアイテム。
「僕にとってその宝物ってのは美久なんだ。」
「えっ?」
ガラスの靴、私!?
私がビックリしたのが分かったみたいに胸元でクスリと小さい笑声が落ちた。
「僕はずっと美久が傷付いてしまわないように汚れてしまわないように守ってきたつもり。どこの男からも。勿論………僕も含めて、ね。」
え…?
「ずっと欲しくて、でも汚れるのも壊れるのも嫌で、大事に隠して眺めるだけで満足してた。でも、もうそれじゃ満足出来なくて、手を出す事を赦されて。それでもこの期に及んで尚、戸惑ってる。純真な美久を自分の手で穢すのも、もしかしたら壊しちゃう事も、ね。」
須藤くんに指摘された、って。
『結局どんな御託を並べてみた所で、結局のところオマエが怖気づいてるだけだろ。』って。
そんな事ないとその時は思ったもののいざこの状況に直面して、彼の言った事は限りなく正論だったと悠里はちょっと悔しそうに呟く。