Glass slipper☩シンデレラボーイは甘く永遠に腹黒に☩

不思議に思いながらも相手は悠里の親友だし、悪い人ではないので、扉を開けた。

途端―――どさっと私に覆いかぶさる黒い影。

えっ?えっ?ええっ!!


「――――って、…悠里?」


私に倒れ込んできたのは見知った程見知った悠里で。

その肩越しに先ほどスコープで確認した人物がひょこっと顔を覗かせた。


「夜分遅くに済まないな、柏木姉。」

「え。はい。こんばんは。須藤クン。」


まるで済まないと思ってなさそうな顔で謝る須藤君に私もとりあえず挨拶する。


「重ねがさね申し訳ないが、今夜は少しコイツに飲ませ過ぎた。」

「え?…でも悠里って結構お酒強いよ?」

「ああ。だから“少し呑ませ過ぎた”んだ。」


ええっ。
強いはずの悠里がこんなになるなんて一体どんだけ飲ませ過ぎたの、須藤クンっ!

私の思った事を察したのか、須藤クンが「スマン」と相変わらずスマンと思ってなさそうな顔で謝った。


「で、この状態のコイツを一人暮らしのマンションに放置していくのも気が咎めるので、柏木姉に頼みたいんだが。」


悠里と私は現在親元を離れてそれぞれ一人暮らしをしている。

お互いのマンションは歩いて十分くらいのトコロなんだけどね。

須藤君のお願いに私は異論もなく承諾した。


悠里を私に託した須藤クンは扉を閉める前に改めて私を見詰めた。



「…まぁ、くれぐれも『宜しく』な。」

「?…うん?」


何か言いたげに見えたのは私の気の所為かな。

パタンと閉じたドアを眺め私はちょっとダケ首を傾げた。

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